ちょっと頑張った

そんな訳でちょっと頑張りました。
とりあえず導入だけでも。

----------------穢れたものは閉じ込めて、奥底に深く眠らせ、仕舞いこんでおかねばならぬ。



「穢れ」とはそれ即ち不浄のものだ。人知の及ばぬ所で派生したそれは人の身に「巣食」い、その者のみならず共同体全てを穢し、混沌を生み、争いの元と成り得るのである。
だからこそ「穢れ」は早々の内に取り除かねばならぬ。




-----------------そうして、閉じ込めて　仕　舞い




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寂れた村だ。否、既に村としての体裁すら保たれておらぬようにすら感じ取れる。ならば此の場は廃村とでも形容するのが相応しいだろうか。
草木は水気を容赦無く奪われ、枯れた井戸端には襤褸襤褸の木桶が打ち捨てられている。
家屋は荒れ果て、まるで盗賊にでも荒らされたかの様な風情だ。

何より異常だったのは、その村に誰も「いない」事であった。
否、正確には数多の村人達がその村には居たのだ。存在している。


--------------但し、彼らはもう何も見ることも語ることも出来ぬ。


黒黄土色の土の布団に無造作にごろりごろりと打ち捨てられた頭蓋の黒い眼窩から、随分と肥えた蛆虫が這い出していた。肋であった筈の白茶けた塊は、既にその体裁を成していない。
そうだ。その村に存在する村人のその殆どが、白骨に成り果てた屍なのだ。
その上を、砂塵がぶわ、ぶわと幾度も通り過ぎていく。其れはまさに、凄惨な光景だった。


己はそれを、始からずっと「見て」いたのだった。


そうして漸く目線を上げた先に在ったのは、ぐるぐると注連縄で巻かれ、更に其の上から奇妙な文様の描き込まれた札をべたべたと貼り付けてある奇妙な社である。
社と云っても荒れ過ぎたそれは最早木材の塊と言い換えた方が無難であろうか。

だが、奇妙である。
その社の周りだけ、土の色が違うのである。
不規則にばら撒かれた風体の白骨の村人達の褥と成っているのは、黒ずんだ黄土色の土であるが、その社の建っている土の色は綺麗な黄土色だ。
奇妙なのは其れだけではない。何故かその社の周りだけ砂塵は吹き荒れておらぬのだ。


僅かばかりの興味を持つて、そこら中にべた、べたと貼られた札を剥がし、中を覗いてみようという気になる。
だが、予想に反して、貼られたその奇妙な文様の描かれた札は、指先がふと触れただけでぼう、と燻った濃赤茶色の焔を上げて、まるで熔けるように消えてしまったのである。
同時に、きつく幾重にも巻かれていた注連縄も消えてしまい、ぎいいと酷く大儀そうな音を立てて、閉ざされていた筈の入り口が開いた。


--------------そうして覗いたその先には



床は一面血溜りの海である。横に転がっていたのは白銀の刃だ。
そうして外側と同じく、内側の壁、床、天井全てに同じようにべたべたと、あの奇妙な文様の刻まれた札が貼り付けて在る。


その血溜りの海の真ん中、何故だか洗い立てのように真っ白な衣を纏ったその少年は。




---------------まるで地獄の底の様な瞳をして、ただただ座り込んでいたのだった。